神保町の「未来食堂」に行ってみた(ランチ版)
神保町にある、「未来食堂」というレストラン。
よくメディア(ガイアの夜明けとか)でも紹介されていて気になっていたので、食べに行ってみました。
「今までにない飲食店」として話題なのですが、
・ メニューは一種類のみ(日替わりの定食900円)
・ お客さんがお店を手伝う「まかない」システム(50分で一食分サービス)
・ ただで一色もらえる「ただめし」システム(「まかない」をした誰かが置いてくれる)
・ 壁に貼られた材料一覧から作ってくれる「あつらえ」システム(「あつらえ」一つで400円)
というあたりが話題とか。店主の小林せかいさんのこの取り組みの書籍も複数出ています。
https://www.amazon.co.jp/dp/4396615981
これらの書籍を読んだわけではなく、急遽午前中に空き時間ができたので行くことにしたので、情報収集はホームページと食べログ程度。
でもホームページ読んでいたら、「一人目は通常900円の定食が500円に!(ただし「一番乗りですか?」と聞いた人のみ)」ということだったので、折角なので開店の11時を目指します。
※ ずっとやっているかわからないので、ホームページ見てあげてね!
場所は神保町駅を出て100メートル?ほどの「日本教育会館」の地下1階。通りに看板等はないので、目指していかないとわかりません。ってかホントにここかな?GPSの時代でよかった…。
ちなみに神保町交差点から日本教育会館を探しつつ歩いていると、同じ通りに「肉を食べるならココ」と言わんばかりのお店、「森のブッチャーズ」があり、そちらにも横髪を惹かれつつ…(幸いこちらのお店は11:30オープンで、私が神保町についた10:50にはまだ空いていなかったので誘惑を断ち切れました)。
到着。
10:55で、まだお客さんらしき人は誰も並んでいません。話題になったお店なので、5分前じゃ1番乗りはダメかな?と思っていたらそうでもなかったです。
この日の日替わり定食は「キーマカレー」らしいですな。
ドアは空いているけれど、11時前なので、お店の前でしばし佇みます。こうして一人で飲食店に並んでいると、「並ぶ場所ここであってるかな…」とか不安になりがちですが、ここはドアに向かって通路が伸びているので、その迷いもなし。
ドア前には椅子が置かれていて、その椅子の上にどさっと20冊くらいの本が無造作に積まれています。あえての手に取りやすい無造作感(たぶん)。「お店に持ち込んでもいいよ」と書かれていたので、気楽に手が出ます。
その中に店主の小林せかいさんの本もあったので、パラパラめくって少し経ったら11時に。
そろそろ入っていいのかな?と思い始めたころ、店内から「お待ちでしたらどうぞ~」とお声がけ頂いたので、店内へ。見ていないようで見てくれている感がうれしい。
…お、小林さんだ!本物!
ちょっとわくわくし始めます(ミーハー…)。
テレビで見た通り、そっけなく、でも不愛想というよりは「素」な感じ。
こういう人、いいなぁ。大体昔から気の合う友人は、こういう飾りのない人。こびず、へりくだらず、でも上から目線ではなく、周りへの視野が広く、但し過度な気配りはしない、でも他人想いなサバンナな人。と勝手に回想にふけりながら性格を想像してみる(ゴメンなさい)。
あれ、そういえば店頭には「一番乗りは500円」とは書かれていなかったなぁ、とちょっと不安になりつつ、席に座りながらおそるおそる「一番乗りは安くなるのって、まだやってます?」と聞いてみる。
せかいさん(以降、勝手に「せかいさん」と呼びます)、手を止めずに「やってますよー」。しめしめ。
ちょっと待ったらすぐにキーマカレーと小鉢のお盆が出てきました。座ってからここまで、約1分。んむ、早い。
そしてその後すぐにご飯が入ったおひつが出てきます。ここまで計1分半。お茶は目の前のコップとポットからセルフにて。
入って2分弱で出来立て(?)の定食を食べ始められるのは、急いでいるときありがたい(というか、急いでいなくてもこのリードタイムはどうせ何もできない時間なので何気にうれしい)。
ということで、食べ始めます。(このあとテールスープもでてきました)
実は食べログでは「味は素朴(…というか、900円にしてはいまいち…)」的な感想が多かったので、期待度は食べログ的に言えば2.8くらい。
というマイ期待度に対して言えば、んー、まぁ、そのくらいかな?という印象。
普通に自分で作る食事に比べれば、
・ ちゃんと小鉢一つ一つで盛り付けられていて
・ なかなか家で作れないテールスープもあり
・ 久しぶりに木のスプーンで食べる感触も
というのはちょっとうれしい。
逆に900円前後の定食屋さんと比べれば、
・ お米はそれほど?大量に炊くとき特有の若干のぱさぱさ感。
・ キーマカレーは、うーん、お肉たっぷりだけど、そのお肉が輸入っぽい。ジューシーさがなく、安物っぽい感じが。
・ 鳥南蛮サラダの衣部分に若干の小麦粉っぽさ…(火が通っていないのではなく、なんというか、配分?)。
というあたりが気になるといえば気になる。
と言いつつしっかりごはんをお代わりさせていただきました(笑
食べ終わったころに、お盆いただきますね、と言われてお盆を渡すと、せかいさんから「お客さんの手作りクッキーです」として小さなクッキーをいただきました。うれしい。というか、面白い。こうしてお客さんからの「もらいもの」システムもあるんだね。こういう仕組みは、近くに住んでいたらファンになりやすい感じ。
というところまで、しっかり堪能して、お会計。
一番乗り価格の500円!人の少ない時間帯のお客さん誘因として良い取り組み。お客さんの数(ニーズ)に応じて値段設定することは他業態でも(特に技術的に、ネット上で)可能になってきているし、それを受け入れる雰囲気にもなってきているので、どうせだったら「時間帯別価格」システムとか導入してみてほしいなぁ。あるいは「滞在時間別価格」制とか。カラオケチェーンみたいになっちゃうとつまらないけれど、せかいさんがやれば面白いものができるかも。と思っちゃう。勝手に。
さて、途中若干ネガっぽいことも書いたけれど、行ってみて、新しい取り組み感を感じられてよかったです。
なんと言えばよいかわからないけれど、ある種、(ランチに限って言えば)「新種のファーストフード」とも表現できるのかな。
ファーストフードは、定義上は「短時間で調理、あるいは注文してからすぐ食べられる手軽な食品や食事のこと」。未来食堂は、この定義を満たしている。
ただ、マクドナルドや吉野家に代表される、普通の(これまでの)「ファーストフード」は、単に「早い」「手軽」を優先して、「マニュアル化」という手段をとったけれど、未来食堂はそれとは違って、マニュアル化ではなく…
いや、なんかとらえきれていないな。やっぱりもうちょっと「まかない」とか「ただめし」とかのビジネスモデル面、提供する側のプロセスも踏まえて考えてみないとダメっぽいかな。じゃあそれはまた後日。(思い出したら。)
あとね、何気に考えさせられたのは「書籍購入優待」制度(と勝手に呼びます)。店内に、「店主の書籍を(ここで)買ってくれたら、1冊で1枚。2冊で3枚の定食券を差し上げます(今回から使えます)」という旨のPOPがありました。1冊約1500円とすると2冊で3000円。
※3000円分の書籍で3回定食が食べられる(=2700円相当)、というのは、ふるさと納税もびっくりの返礼率なので、未来食堂に対してビジネス的に興味がある、という人は、本を買いにここのお店まで来てみてもよいかも。読むだけよりも、実際にこのお店の空気感も感じた上で読むほうが絶対イイし
考えさせられた、というのは、こう、飲食店であっても、色んな手口があるんだなぁ、という。
普通は飲食店経営であれば、ウェブサイトを作ろうが、書籍を出そうが、最終的には「来店誘因」で飲食で収益を出す、というゴールがあるわけだけど、未来食堂(というかせかいさん)としては、このリアル店舗への誘因で収益化させることが目的ではなく、この「食堂」は、単なる「新しい(求める人がいる)仕組み」を体現した「場」であって、ショールーム的でもあるのかな、と。
その先に何があるのか?
それは例えばホームページで告知している「系列店(2号店)計画」なのかもしれないし、もはや「未来食堂」ではない何か(例えば「未来カフェ」だったり「未来学校」だったり)なのかもしれないけれど、いずれにせよ、この「未来食堂」は、そうした色んな可能性の単なる第一歩なのではないかなぁ。
とすると、今年か来年か、そのあたりにせかいさんはこの神保町の「未来食堂」からいなくなり(誰かに任せて)、新しいものを立ち上げるんじゃないかなぁ。
と、妄想にふけったところでそろそろ寝ます。
いずれにせよ、「何を実現したいか」「どう実現させるか」は、既存のフレームから外してみる(全く違うものを結び付けてみる)のは、キングコング西野的(勝手に言ってます)で面白いし、やってみたい。
※ ちなみに、このエントリーを書きながら見たブログで、なんか未来食堂っぽいなぁ、というエピソードがわかるものがあったのでご紹介。
未来食堂に弟子入りしてきたら、テレビ出演してしまった話。 - ごはんと世界と人と。
真ん中から少し下あたりで、取材貸し切り中の店舗に来た女性を追い返さず、「おなかすいてます?」と聞いて、「あるものでよければ」とごはんを出すせかいさん。
今話題の「働き方改革」の中で、どんどん効率性を追及して機械的になってしまうのではなく、こうした対応をもっともっとできるようになったほうが良いかも、と思い始めました。